2010年7月14日水曜日

白炭出しと、芝生のグラウンド

道具をそろえたり、失敗したりなどの苦労の末、昨日、やっと白炭出しに成功しました。

今までにない出来栄えの炭が出来ました。

ちなみに、炭には大きく分けて黒炭、白炭の2種類あります。

黒炭は、窯が冷たい状態から、少しずつ温度を上げて、窯の中や材料を乾燥させていって火をつけていき、炭化が終了したあたりで、ねらしとか精錬とか言われているのですが、煙突を広げ、空気穴も広げて窯内の温度を上げて、炭を引き締めて、それから煙突も空気穴も閉じて酸素が入らないようにして火を消します。

白炭は、物を入れると火がついてしまうくらい熱い状態の窯に材料を入れ、すぐに炭化が始まり、炭化が終わるあたりで、煙突や空気穴を少しずつ広げ、最後に窯口を全開にしてジャンジャン空気を入れて、窯内の温度を1000度以上の高温にして、そのまま炭を引っ張り出し、スバイといわれる砂と灰を混ぜて水で湿らせたものをかけて火を消します。

黒炭は窯内の温度が白炭ほど高温にならないので、柔らかく、電気も通しません。農業用や、湿気とりや、におい消しなどに向いているといわれます。火がつきやすいのでバーベキューなどに向いていますが、火は白炭ほど長持ちしません。

白炭は超高温で焼くので、炭が超引き締まり、備長炭の一部などは、鋼よりも硬いといわれています。電気を通すので、エジソンの作った電球のフィラメントは、度重なる失敗の末、この白炭の繊維を使用したそうです。硬く引き締まっているので、黒炭ほど湿気とりやにおい消しに向いていませんが、電気を通すので、電磁波をよく吸収し、炭素の純度が高いので、老化を防ぐ還元作用も強いと思われます。ガス分が全部出しきってあるので炎を出さないので、屋内で使用することができ、焼き鳥屋などで使用され、火力も強く、火も長持ちします。

説明が長くなってしまいましたが、昨日は初めて炭焼きがこんなに面白いものだと感じ、興奮はいまでも続いています。

黒炭だと、火を消したり、炭だしの作業がただ面倒くさいだけの作業なのですが、白炭は、炭出しや消化が炭焼きのプロセスの中で、一番盛り上がり、美しい作業です。その分、超きつく、熱いですが、それもキツいのが大好きな人にはたまりません。

連続して焼きたかったけど、土曜日からアメリカに行ってしまうので、準備もあるので今回は窯を休ませています。


このように、少しずつ空気穴を広げていき、窯内に酸素を入れて温度を上げていきます。


そして、窯口を塞いでいたブロックやべトを崩します。





師匠の藤田さんがサプライズで来てくれました。3日連続サプライズで来てくれました。

今までいろんな失敗をして、考えたり、本やインターネットで調べて悩んできたことが、3日間の中でいろいろな話を聞いて、見せてもらって、パズルがはまったような気がします。


昔の話も聞かせていただきました。

藤田さんが炭を焼いていた太平洋戦争の前後には、車もチェーンソーも、ユンボなんかもちろんなく、全部、人力でした。

朝、暗いうちに家を出て山を1時間以上もかけて歩き、窯場へつき、帰りは数十キロの炭を担いで暗くなる前に下山する。

炭焼きは、材料のあるところへと窯を移動していくのですが、焼け土が手に入らない場所では、窯を作って、1~2回炭を焼いた後、ひび割れてくるので、たたき壊し、また焼け土を使って窯を作り直して、ひび割れしない窯を作ること。

窯を作る石も近くにないため、沢まで行ったり来たりして火に強い石を集めてくること。

チェーンソーがないので、のこぎりで木を切っていたこと。

どの話も衝撃的で、

「今考えると、ようあんなことが出来たと思うろもの」

と言っているものの、自分が全く知らない時代の、知らない世界を体験した人が目の前にいることに衝撃と感動を覚え、藤田さんが親父さんから受け継いで、親父さんがその前の世代から受け継ぎと、続いている技術を、できる限り受け継ぎたいと改めて思いました。



写真ではオレンジ色に輝くだけですが、中では、炭の1本1本が赤色から金色へと輝いています。

皮膚が慣れていないので、地獄のように暑いですが、美しい。


先がL字型のカギになっている鉄棒で炭を引っ張り出します。

持てないような重いものを作ってしまったので、

藤田さんも、

「こりゃあ、持てねえろ。若ケェモン向けらな」

と言っていましたが、なんと軽々と持っている!しかも使いこなしている!


ドラマの「のだめカンタービレ」を見ていたら、「オーケストラの指揮者は魔法使いだな」と思いました。実際はどうかわからないけど。

藤田さんも魔法使いのように見えます。

作業を見ていると、火も、べトも、道具も生き物のようで、「ヘイ!待ってました!」と、喜んで藤田さんに使われているようです。

一緒に山へ入りましたが、ひとりで入ると怖い森の中も、森全体が喜んでいるようで、とてつもない安心感がありました。


出てきた炭は、

「チャリンチャリン」

という金属音を出して出てきます。

ちなみに、ハンパじゃない熱さです。


出した炭に、砂と灰を混ぜて水を含ませたスバイをかけて消化していきます。

美しい炭がたくさん出てきました。もったいなくて売れません!アメリカに自慢しに持っていきます。いろんな人のところに持っていって自慢してきます。

帰ってきて、8月からまた焼き始めたのから売りモンにしていきます。


本当は炭出しは今日の予定で、昨日は、燕中等教育学校の芝の状態を見に行こうとしていたのですが、窯の状態が炭出しの状態だったので、昼間は作業服でなく、普通の服で真っ黒で泥だらけで作業し、その後、グラウンドへ行きました。

前回の窯で、予定が入っていたために、炭出しを1日遅らせたために失敗してしまって途方に暮れているときに、

「自分の都合に合わせんのうて、窯の都合にあわせんとならんのうて」

とアドバイスしてくれたのが痛いほど身にしみていました。


夕方、薄暗くなってからなのでわかりにくいでしょうが、芝が芽を出しています!

実際は写真よりもっと芝が広く、緑っぽい感じです。

芝生の緑と、ラグビーポールの組み合わせは最高に美しい。


雑草も生えない「死のグラウンド」に生命が誕生した。楽しみだ!

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