2010年9月22日水曜日

現場主義

1週間ちょいかけて、竹炭の白炭を4窯分焼きました。

白炭焼きの洗礼を受けました。

炭には、黒炭と白炭がある。

黒炭は窯の中に材料を入れて、乾燥焚きから初めて、少しずつ温度を上げて炭化していき、炭化が終わったあとは窯口と煙突を閉じて、1週間くらいかけて消火する。

白炭は、炭化が終了した後は、窯口と煙突を広げ、空気をジャンジャン送り込んで、最後の一撃を加えることで温度を上げる。それによって炭が引き締まって硬くなり、そのまま鉄の棒で引っ張り出す。そして、「スバイ」と呼ばれる湿らせた砂と灰の混ざったものをかけて消火。物を入れると火をつけて燃えてしまうような温度の窯に材料を入れて、再び炭化を始めていく。


白炭は、黒炭にくらべて、窯の回転サイクルが非常に速い。早いだけでなく、高温で焼くことができるので、白炭は電気をよく通すため、還元作用が強いと言われている。また、純度が高いために、炎を出して燃えることがなく、お茶や料理など、室内で使うこともできる。


回転サイクルが非常に速く、通常は

1日目 窯出し。それから材料をいれ、口火焚きをし、炭化を開始。出てきた炭をふるいにかけて選別。

2日目 材料の切り出し。90cmの長さにそろえ、2~3本ずつ紐で縛る。

3日目 1日目と同じ。

と、これを繰り返す。


材料の質や、立て込み方によっては、2日目にはもう炭化が完了していて、出せる状態になってしまうので、休みが全くなかった。

のこぎりやナタや、その他の道具は握る系の道具が多いので、すでに握力の感覚はない。

もうちょっとしたら、たぶん握力がつきすぎて、片手でりんごを粉々にできる北斗の拳のようなパワーになっているに違いない。


炭焼き小屋から家に帰ってきて、夕食を食べ、翌日のおにぎりを作り、洗濯をし、コンピュータを開いてメールをチラリと確認し、電源をつけっぱなしで(自動的に消える)寝てしまう。そして翌朝、明るくなる前に起きて出て行く。


昨日、ついに体力の限界が来てしまい、半日の休みをとった。ラーメンを食べて、本屋へ行って、バタンと倒れてしまった。今日は山で切りっぱなしていた材料をとりにいってから、明日からの再スタートのための買出しをし、92ちゃんにチェーンソーの刃の交換やメンテナンスをやってもらった。

明日からまたシゴキのサイクルが始まる。慣れるだろうか...


その後、西山さんのところに行くと、発売当時に読んだ覚えのある稲盛和夫さんの「生き方」という本が置いてあった。






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本の中のエピソードで、教えてもらったものがある。


その昔、本田宗一郎さんの話が聞けるということで、2泊3日の温泉旅館での経営の勉強会に参加した。みんなで風呂に入って、浴衣を着て講師の本田さんが来るのを待っていた。

遅れてやってきた本田さんは、遅れた上に、油のしみついた白い作業服を着ていて、こう一喝した。

「皆さんは、いったいここへなにをしにきたのか?経営の勉強をしにきたらしいが、そんなことをするひまがあるなら、一刻も早く会社へ帰って仕事をしなさい。温泉に入って、飲み食いしながら経営を学べるわけがない。それが証拠に、私は誰からも経営について教わっていない。そんな男でも会社が経営できるのだから、やることは一つ。さっさと会社に戻って仕事に励みなさい。」


高校生くらいのときに、よく本田宗一郎さんの本を読んで憧れていたので、本田宗一郎さんらしいとうれしくなってしまった。

そして、この本田さんの言葉は、僕が「なぜ炭を焼いているのか」というひとつの答えでもあるように感じた。


エコとか地球のためにとか、未来のためにとかで集まって勉強や話ばかりしている時期が僕にもあった。仕組みづくりとか、仲間作りとか言っていると、なんとなく行動しているような気分にもなっていた。しかし、実際には何も行われず、勉強して満足をしていただけだった。

今の時代、人は体を動かさなくなったようで、現場で実際に家を作る大工は不足しているけど、建築家になって、大きな視点で管理したい人は多いと聞く。

エコとか環境活動とか、市民活動とかも、人を動かしたい人ばかりで、実際に体を動かして微力を尽くすというような人はあまり見当たらないように思えた。というより、実際に行動を起こしているような人は、本田宗一郎のようにそういう場所には出ていかずに、コツコツと前に進んでいるのではないかと思う。

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